何の変哲もないイルミンスールの日常

「人の性格ってのは面白いね」
世界樹の枝に寝ころびながら終夏はひとり言のように言った。
その上の枝でヴァイオリンの弦を張り替えていたブランカは「ん？」と下を覗き込む。
「性格？」
「そう性格」
足をぶらぶらと宙に投げ出しながら終夏は続けた。
「どんだけ猫をかぶっていても結局の所ボロが出る。同じ性格の奴なんてどこにもいない」
「同じ性格の奴ばかりだったら恐いを通して気持ち悪いよ」
「良い奴でもね」
「嫌な奴だと尚更」
話している内に弦を張り終わったのか、ブランカはヴァイオリンを構えた。
凛とした一音が青空を駆ける。
その音に驚いたのか世界樹の根もとから偶然出てきたフラメルが躓いたのが見えた。

「フラメルってさ、馬鹿だよねぇ」
馬鹿だと言葉に出してはいるもののその声は侮辱の色など一切含んでおらず。
「馬鹿だよねー」
ブランカはつられて笑った。
カラカラと明るい笑い声が響き、その声に気がついたフラメルが「こらそこ笑うな！」と怒ったのはその少し後の事。

空は快晴、風は緩やか。
どこぞでリンネちゃんの火炎魔法が放たれた事も合わせてとりわけいつも通り。

今日もイルミンスールは平和だ。